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オメガ ブリッジ

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電磁力で浮かされた道路

■未来都市の " FLYING CARPET "

かつて子供の頃、TVアニメで見た「未来都市」のシーンに次のようなものがあった。

近代的なビルが立ち並ぶ都市。そのビルの間を縫って走るハイウェー(高速道路)。 そのハイウェーは指輪のようなリング状の構造物の間をくぐり抜けるように走っている。 道路はそのリングの中を通るものの、リングからは浮いている。

マジックのようなその仕組み、リングが発する電磁力のお陰で道路が空中に浮いているのだのこと。 このため道路を支柱などで直接的に支える必要はないそうだ。
リニアモーターカーと同じ仕組みで、 その姿、まさに「空飛ぶじゅたん」だ。

そしてさらにはそこを走っている車そのものにもタイヤなどなく、 同じ仕組みで道路の上を浮いて、音もなく走っている。
(タイヤメーカーは全て廃業したのだろうか)

当時から考えれば、「今」は立派に「未来」かもしれない。
しかし人体影響を考えれば、 さすがに今の御時世、強い電磁力で道路を浮かせる訳にはいかない。

だが、 それに近いものなら考えることが出来る。

"未来技術"は用いずに、我々になじみのある日用品:自転車を使う。


スポークの力Tは、それと釣り合うような分力N
= リム方向の力となる

リムの力は例えばリム上部では水平の方向=赤点線N1を向いているが、 下方に行く途中でスポークに次々に引張られることでその力は(赤点線のような方向ではなく)、 リム方向と同じ=青線のように曲げられて流れていく(N2)

■スポークホイール:力を軸力のみで伝達

自転車の車輪は、専門的には、「スポークホイール」と呼ばれる。
これは単なる円盤状にふさがった車輪=ホイールと区別するための呼び名である。
スポークホイールは左図のようにタイヤの土台となるリング状の部材=リム 、これに放射状に張ったスポーク、そしてそのスポークを束ねる中央のハブより構成される。 そしてそのハブにアームを介して人の重量がかかっている。

さてこのスポークホイール、普段気にもせずに自転車に乗っているが、以下の様な、非常に特殊な特徴がある

いまハブに人の重量Wがかかると、この重さは多数のスポークに分散されリムへ伝わる。
この時、スポークからリムへの力はリムの曲がり方向に釣り合うような力=分力となってリムへ伝えられる。

そのようにして生じたリムの力は最終的に地面目指して流れていく訳だが、 その道中、次々にスポークで引っ張られることでリムのカーブ=円弧に沿って向きを変えて流れていく。
このようにして方向を曲げられながら、最後に地面に接して力を渡す。

このようにリム内の力はリムの方向=円弧方向のみに作用し、リムから外れる方向へは生じない。
力学的に言えばこれは軸力のみで伝えられ、せん断力を生じない、ということである

せん断力を生じないなら曲げモーメントも生じない。曲げMを生じず 軸力のみの部材は非常に効率的に力を伝達でき、断面は極小で済む。


ロープウェー:wikipediaより


荷台に使われた「車輪」
wikipedia 車輪より

■ファニキュラー

このように力の方向と部材の形が同じであること、 つまり力が軸力のみで流れていくことををファニキュラーfunicularという。

スペインでロープウェーのことをフニクラと呼ぶことがあるが、 これはファニキュラーが語源である。 ロープウェーを吊るケーブルが自分の重さでたわんでファニキュラーカーブを描くことから転じてそう呼ばれている。
また、かの地の観光名所、ガウディのサグラダファミリアは逆さ吊りの模型で形を決めたことで有名だが、 これも力が軸力だけで流れ、ファニキュラー形態の代表例である。

ところで、転がることで摩擦を減らし、物の運搬を容易にした 「車輪」は人類の偉大な発明の1つと言われている。
最初は円盤状であったが(BC5000年)その後このスポークホイールが発明された(BC2000)。
しかしそれが発明された時、車輪の内部でこのようなことが起きているとはおそらく分かっていなかっただろう

もし仮にリムがスポークで引っ張られなかったら、リムには曲げMが働き、細いリムはすぐにひしゃげてしまう


タワー姿図

イメージフォト(ダイソンHPなどより)

タワー中央位置断面: 道路は"フィン"で吊り下げる


スポーク配置とその時のファニキュラー

■Ω型タワー

これまでの仕組みを基として左図の様な、道路を吊るためのタワー(主塔)を考える。

タワー上部が円形となっていて、下方はすぼまった形。ギリシャ文字のΩ:オメガ、 あるいはアニメ「オバQ」の弟、「O次郎」のようなフォルムとなったものである。

このタワーにスポークとなるケーブルを張り、その中央:"ハブ"より道路を吊り下げる。

スポークは時計で言うところの「8時から4時」までの範囲に張る。

一番下のスポーク: 4時と8時は、路面からのクリアランスの邪魔になる(アタマに当たる)から路面を離す必要がある。

よって路面(橋げた)は"フィン"と呼ぶサメの背びれのような吊り板材でハブから吊り下げることにする。

橋げたはタワー間をスパンとする梁として働くのだが、フィンによりそのスパンが減り、 応力を小さくすることが出来る。

吊り下げたことでクリアランス分=フィンの高さ分 、梁成が増えたのだとも言える

"スポーク"の4時、8時のケーブルはまさにクリアランスの邪魔であるが、 もしそれらをやめて、「9時から3時」までにする(勤務時間を減らす(^^;)と、その時のファニキュラーな形態は逆U型となる。

4,8時のケーブルがあることで力は内側に曲げられ、Ω型のタワーとなる。

なお9-3時の逆U時でも別に問題があるわけではない。 しかし造形的な緊張感に欠ける(締まりがない)ように思われる。


床面をカーブさせた案

■ねじれ対処:アーチでファニキュラーに

路面をどう支えるか、という鉛直支持の問題はこれにて一件落着、である。

しかし二次的な問題として、路面のねじれ、及び横方向力(地震力)への対処法を考える必要がある。

今のままでは床面がブランコのように揺れてしまうからである。

この解決法として最も簡単なものは、 タワー脚部から上にケーブルを延ばして床面の下面を留めることである。

しかしこれは非常に簡単ではあるが、余り工夫のない案である。
またタワーに余分な力を負担させてしまうことにもなる。

よってここでは別の、興味深い案を紹介する。
それは左図のように路面をアーチ状にカーブさせることである。

道路の形=線形は交通要求から決まり、 構造上の問題でそれを曲げてしまうとは本末転倒かもしれない。
しかし以下の様な大きなメリットがある。


まず床面への横方向力:地震力に対してだが、 路面をアーチ状にカーブさせるとその路面は横方向力に対して横倒しのアーチとして働く。
アーチは力を軸力で伝達し、曲げモーメントを生じない。つまりファニキュラーである。

よって効率良くスムーズに力を橋の両端まで伝達できる




床面をねじる力に対しては上図の場合、 橋の上側を左側に、下側を右側に押すペアの力(=偶力)と同等である。 よって床面を上下2つのアーチとして働かせ、上面は引張力が働くアーチ、 下面は圧縮力が働くアーチとして抵抗させる

次に橋のねじれに対してである。橋の片面に力が集中したりすると橋げたがねじれてしまう。

これは一般に「リングガーダー効果」と呼ばれる、以下の様なアーチ作用で処理する。

左図のようなねじれ力は、橋の上側を左側に、下側を右側に押すペアの力(=偶力)に置き換えることが出来る。

これに対して路面の上面と下面を、ペアのアーチとして働かせる。
それぞれのアーチを左図の場合だと上面を引張力が作用するアーチ、 下面を圧縮力が作用するアーチとして働かせ、効率的に抵抗できる。

これにより、横力、ねじれいずれに対しても路面そのもののアーチ効果で抵抗でき、 タワーはそれらの力に対して何もしなくてよい。

これをもしタワーで負担させるとなるとタワー断面が増加する可能性があるが、本案ならその必要がない。


■"FLYING CARPET" の再現

さすがにいきなりハイウェーに採用するのは難しいかもしれないが、歩道橋程度ならば可能である
リング状のタワーをくぐるのは大人であっても、何となく気持ちが上がる、楽しい経験だろう

遠景ではスポークケーブルは細くて見えないだろうから、 あたかも床面が宙に浮いているように見え(左図)、「未来都市」で見た"FLYING CARPET"の再現となるだろう


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